上場時の株価は類似企業を参考に決められます。そこで現在の株価を算定する上でも類似企業は何かが重要です。さて、類似企業の選び方ですが、財務数値と事業価値、株主価値の関係が評価対象企業(つまり株価を評価したいベンチャー企業)と類似企業の間で似通っていることが前提となりますので、資本コスト、成長性、収益性が類似する企業を選定すると言うことになります。
そこで、事業内容、事業規模、リスク要因、成長ステージ等の共通性を基にして類似企業を絞り込み、資本コスト、成長性、収益性という理論上の決定要因を踏まえて決定します。
なお、企業価値評価ガイドラインでは、類似上場会社選定の判断要素例として以下の8項目が例示されています。
1. 業界 | 同じ業界団体あるいは同種類の産業分野に属しているかどうか |
2. 取扱商品、サービス | 商品製品やサービスが同種のものあるいは競合するものであるかどうか。 |
3. 営業等の許認可関係 | 事業を行うために同種の許認可等が必要かどうか。 |
4. 事業規模 | 売上高や総資産・従業員数等において、事業規模が同程度であるかどうか。 |
5. 成長性、新規性、または成熟度 | 新規ビジネス分野あるいは新規製品を取り扱い、高い成長性がい込める業種かどうか、あるいは、既に成熟産業の分野となっているかどうか。 |
6. 収益性 | 収益性において同程度の会社かどうか。 |
7. 地域性 | 地域色の強い会社の場合、同地域の経済環境にある会社かどうか |
8. 事業戦略 | M&Aを多用するなど事業拡大戦略等が似通っているかどうか。 |
(出所)「企業価値評価ガイドライン」42p
また、類似企業をどれだけ選べば良いかですが、評価準備における類似企業のマルチプル水準が異常でないかどうかの検討も必要となります。このような観点から共通性の高い企業が選定できる場合は類似企業の数は少なくても良いが、共通性の程度が低い場合には、類似企業の数を増やして平準化するのが一般的です。