事業計画書というよりもむしろ資本政策に入るのですが、事業計画書と資本政策はベンチャー企業にとっては双子の兄弟のようなものです。一卵性双生児ではなく二卵性双生児のようなものですね。投資家にとって銭金の匂いがするのは、事業計画書よりもむしろ資本政策の方です。
事業計画書は起業家の夢のつまったものですが、資本政策には持ち分比率や必要資金調達額、期待株価が書いてあり、自分の持分と時価総額を照らし合わせると、自分がどれだけ億万長者になるかということを示しているからです。そうは言っても捕らぬ狸の皮算用でしかありませんけれども。
さて、企業価値、つまりその時の株価は企業が何らかのバリューアップをしたときに変化します。通常は右肩上がりの株価を描くはずです(資金調達によっては発行済み株式数が増えるため、時価総額は上がれども株価は下がるという現象はあり得ます)。このバリューアップをしたときというのがマイルストーンとかぶります。仮にビジネスに影響を与える特許を取得した、その他は日本の上場企業と企業提携をしたというと、売り上げがすぐには伸びなくても、企業価値は高まりそうだとイメージは尽きますね。株価は利益が上がれば上がるのではなく、利益が上がるのではないかという株主や投資家の思惑で上がります。
最初から株価を上げすぎると、次の資金調達をする際に、株主を探すのが難しくなるので注意しましょう。逆に安すぎれば持ち分比率が下がってしまうので経営権に影響してきます。
エグジットの株価算定は、証券市場の市況とも関係してきますから、とりあえず、今の市況が数年も続くと仮定して仮置きしておけばよいでしょう。
株価を高く設定しすぎると、ダウンラウンドの心配も出てきます。通常はラウンドAとラウンドBでは後者の方が会社の価値は上がっているはずです。しかし開発が計画通りに行かない、会社のキーパーソンが辞めてしまったという理由で追加資金が必要になる状況では、ラウンドBの調達を始めたとしても、追加出資の時には、会社の評価額が低くなってしまうのです。このようなときにも、株価はラウンドB初期(前回の調達時)よりも安い株価で資金調達をしなければならなくなってしまいます。
できる限りダウンラウンドは避けたいところです。この事象が生じると、前回出資した株主は気分が宜しくありません。場合によっては、自分たちの株価も遡って下げろ、と言ってくる場合もあります。このようなトラブルが起きないためにも、マイルストーンのスケジュール管理は徹底的に行わなければなりません。