ベンチャー企業にとっては、商品は優れているものの、販売力や営業力が乏しく、売上が思うように伸びないケースがあります。そこで営業を販売代理店にお願いすることで、販売力を強化することは販売戦略の一つと言えます。投資を受ける際には、投資家に販売代理店契約書を見せることになります。投資先に不利益な条項はないかどうか、上場審査上問題とならないかがポイントになります。販売代理店契約で注意すべき点についてみてみることにしましょう。実際に契約を締結する際は、弁護士にチェックを依頼してください。的確にリーガルリスクを教えてくれます。さて以下、最低限のチェックポイントを見ていきましょう。
(a) 形態を明確にすること
販売代理店契約は、①売買型と②仲介型に区別されます。売買型は顧客から販売代理店に代金を支払って、販売代理店からベンチャー企業に支払われます。実際、販売代理店は代理をしていません。仲介型は販売代理店が開拓した顧客をベンチャー企業に紹介して、ベンチャー企業と顧客が直接おカネのやりとりをして、販売代理店に手数料を支払います。販売代理店の都合で、リスクを負いたくないから仲介型を契約書上のものとし、実際は売買型で処理をしたがることがあります。日本の取引慣行では売上重視ですので、売買型だと代金全額が売上高となりますが、仲介型だと手数料しか売上高になりません。販売代理店のお願いを聞いてしまうと、契約書と取引実態が異なることになり、上場審査上問題が出てくることもありますので、契約書に忠実に取引をしましょう。
(b) 独占と非独占を明確化すること
ベンチャー企業としては、独占的な販売権を販売代理店に付与すると、事業活動が制約されてしあうので、慎重に検討しなければなりません。特に独占権を与えた場合、最低売上数量(最終顧客が買わなくても販売代理店は購入しなければならない)を契約書上撒いておかないと、ベンチャー企業に不利に働きます。もっとも力関係としては最低売上数量を契約書上記載することは容易ではありません。
(c) 仕切価格の設定について
仕切り価格とは、販売店への販売価格のことですが、ベンチャー企業の売上を決定してしまうので最も重要な項目の一つと言えます。契約期間が長い場合、経済情勢や競合の状況で仕切り価格の見直しが必要な場合が出てくるでしょう。
(d) 引渡に関する規定
売買型の販売代理店契約においては、商品等の引渡の規定を入れるのが一般的ですが、ベンチャー企業にとっては、所有権の移転時期はできるだけ遅い時期(代金の支払い完了時)とした方が有利に働きます。
(e) 商標
OEMでない限り、ベンチャー企業のブランドで販売するため、それに付随して商標を来仙するすることになります。
(f) 二次販売代理店契約
ベンチャー企業にとっては、販売代理店が多いほどメリットもある気もするが、商品のブランドイメージをコントロールするためには慎重に取り扱わざるを得ない場合もあります。
(g) 販売代理店の義務
ベンチャー企業としては多くの売上を上げていただかなければならないので販売代理店に遵守してほしい義務を規定します。例としては、①拡販の努力義務、②商標の使用義務、③販促活動義務、④サポート義務、⑤クレーム対応等が考えられます。なお④⑤についてはベンチャー企業側でサポートセンターを持った方が良いと思われます。
(h) 競業禁止
販売代理店契約においては、販売代理店が当該ベンチャー企業以外の類似の商品等を取り扱うことを禁止する場合があります。
(i) 免責
ベンチャー企業が販売する商品は、完全である保証はなく、現状の状態で商品を供給すれば足り、当該商品に欠陥がないことを保証しないと規定する場合がありますが。相手から受け入れてもらえない場合もあります。損害賠償については、商品代金の相当額を上限とするというくらいでしょうか。
以上、過度にベンチャー企業側(あなた)がリスクを負っていないかどうかを弁護士にチェックしてもらいましょう。