今回の出資を決めていないのに、次回の投資候補を答えろですか、ずいぶん気が早いこと。と思われるかもしれませんが、特に個人投資家にとっては気になる人もいます。シード期やスタートアップ期の投資家は、自分が最後とは思っていませんし、しばらくは出資を受けないと企業自体の存続が厳しいこともわかっています。そのときに次の投資家候補が見えてこないと、次の資金調達がスムーズにいくだろうかと心配になります。資金が途絶えたら、自分の出資したお金が無価値な未公開株式の紙っぺらに変わってしまうわけですから、それは心配に決まってます。
もちろん、次の投資家がすぐに金を出すと言っているとまでは言わなくていいのです。検討してもらっているでいいでしょう。あるいはこのような先を考えてアプローチを始めていますでも構いません。嘘だけはやめましょう。以前、次の出資者候補を伝えて、投資家を安心させようというトークに使っている人はいました。例えば、ジャフコから投資を検討してもらっていて非常に感触がいいと言って、ジャフコの担当者の名刺をちらっと見せる。ベンチャー・キャピタルの老舗が出してくれるというのなら、この企業への投資は当たりかもと思わせる効果は抜群です。
そういえばある会社は直近の資金繰りが厳しくて、次にベンチャー・キャピタルからの出資を仰ぐことになったと、あるベンチャー・キャピタルの契約書をチラッと見せ、このつなぎ資金としていくら貸してくれ、という話もありました。その契約書が偽物だったら詐欺ですね。
次回の投資候補がライバル企業の傘下にあるベンチャー・キャピタルであれば複雑なことになるでしょう。株式の割合次第では、その親会社の意向が反映されないとも限りません。特にコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC:Corporate Venture Capital)からの出資を仰ぐ際には、その会社の色を背負ってしまうこともありますから注意が必要です。
話は飛びますが、昔、出資はしてくれるものの9割分は、その会社のシステムを購入するのが条件だという話がありました。出資は資産、その9割分は会社として売り上げで立つ。体の言い粉飾決算みたいな会社がありましたね。それだけ利益が生じますから、銀行借り入れやあるいはエクイティ調達はしやすかったに違いありません。1割くらいであれば、投資先が潰れて回収できなくなったとしても、売上原価のようなものだと思えばあきらめがききます。