投資を引き出すのは事業計画書とプレゼンなのですが、その前にどんな「サービス」かの方が重要です。融資であればある程度返済原資を確保するくらいの利益が上がればよいので、誰でもやっている事業でもよいのですが、投資の場合は融資と異なって化けなければなりません。そして、必ず顧客がいて、売上が立って事業として成立していなければお話しにもなりません。そうなると、大勢の人が抱える深刻な問題を解決するサービスというのが前提となります。
また大勢の人が深刻に困っていること、これは薬で言うところの痛み止めです。今すぐ効く薬であることが必要なのです。しかし多くの起業家の発想が、痛み止めでなくビタミン剤であることの方が多いのです。ビタミン剤では何日も飲まなくても支障はありませんが、痛み止めであれば今すぐ欲しい。そう思える商品やサービスでなければ投資家には受けません。
また、万能の痛み止めも、投資家受けはしません。ある意味では万能の痛み止めは何も効かないものだからです。ある特定の場所の痛みに特化した痛み止めを探しましょう。
痛み止めの完成度が低ければ、投資家に対する訴求効果は大きくはありません。そしてある特定の人たちだけにたまたま効いたような痛み止めではダメなのです。大勢の患者がいれば、多くの投資リターンが得られます。この痛み止めという技術を他の同業他社の痛み止めと比較して、効き目が強く、さらに副作用がないもの、こういったものをベンチャーキャピタルでは望んでいます。
また、この痛み止めを作るのに一体いくらかかるのかもポイントになります。ある痛み止めは5億円でできるといっていたが、こちらの痛み止めは50億円もかかるのか。こちらの痛み止めの方がよさそうだが、その後の利益を考えると、多少効果が薄いが、他の痛み止めで十分だと思われてしまってはいけません。もちろん投資家の頭の中で、あなたの痛み止めに50億円投じた方が、キャピタルゲインがより得られるというのであれば、話は違います。
もう一つ投資のタイミングにもよります。何年もアイデアを温めて完全を期して資金調達を試みたときには、消費者の悩みは別の者に変わってしまっていたということはよくある話です。産業化の動向、商品動向、各国の政治変化等、時代の流れは大きく変化してきます。投資家は世の中の動きに敏感であって、別の痛み止めに興味関心が移ってしまうかもしれません。